マナーについて



 元々釣りは、親が子どもに、年長の者が年下の者に、師匠が弟子に教え継いでいく遊びでした。
 その教えられる事の中には、釣りの技術や魚の習性だけでなく、釣りをす楽しむための暗黙のルールやマナーのようなことも含まれていました。

 私もほんの小さな頃に父親から楽しい遊びとしての釣りを教えてもらう中で、子どもなら海や川で思わずしたくなるような、石を投げたり水に入ったり水面をライトで照らしたりということは、釣り場では決してしてはならないのだとずいぶん厳しく叩き込まれました。
 帰宅した後は疲れていてもまず道具の手入れと片付けを怠らない事も教えられました。

 最近では、インターネットから手軽に情報を得て、釣具店の頑固そうな店主の親父に声をかけなくても、ずらりと商品の並んだ大規模な量販店で道具を揃えて、単独であるいは上下関係の無い友人同士で出かける、お手軽レジャーやゲーム感覚の色合いが濃くなってきました。
 そうした環境とマナーや暗黙のルールが忘れ去られていることや、入門書に載らないような全ての釣りを横断するちょっとしたコツや、常識が忘れられていることは無関係ではないような気がします。
 残念なことに団塊世代以上のベテランと見受けられるような人の中にも、マナーの欠落している人が大勢いるのも事実なのですが。


 釣り場では挨拶をしたいものです。
 隣同士一日釣りをするのにまるで挨拶も無いままピリピリはお互いに落ち着かないものです。
 釣り場が混んでいる時は先客に挨拶すると感じがいいものです。照れくさいとか気後れするものですが、そんなときには、「釣れますか〜」と情報収集にもなる便利な言葉が釣りの世界にはあります。


 仕掛けやルアーを投げ込む時は、後方周囲に人がいないか必ず確認しましょう。狙ったポイントに正確にしっかりエサが付いた仕掛けを絡ませずにいい形で届けようと思えば、自然と投入前に竿先や仕掛けが真直ぐ伸びているかに神経がいくものだと思います。
 針を引っかけたり錘が当たって怪我をさせるトラブルは、ちゃんとした釣りをすれば100%防げるはずです。周りの人間に危ない目をみさせたり、針をひっかける行為は、釣りが下手な人のする恥ずかしい事だと思いたいです。


 釣り場にゴミを捨てない。どんなに気をつけても根掛りで仕掛けを水中に残してしまったり、釣り糸の切れ端が風で飛ばされたりしてしまうのが実際の現場です。でも、せめてそれ以外のゴミを釣り場に捨てることはやめましょう。
 タバコのポイ捨て、釣れた外道の魚を地面の上に放置したままにする事も止めましょう。

 ベテランの中にはエサ取りや外道がかかると、陸に放置する人がいます。もちろん干からびて死んでしまい腐ってしまいます。
 「離すとまた喰ってくる」「元に帰すと魚が散る」などと言うのですが、エサ取りの群れが数匹の増減で状況が変わる訳がありませんし、魚が水面の上に釣り人が居て危ないぞと仲間に報告することもありません。
 そんな事よりエサ取りを避ける釣り方の工夫をする方が前向きで楽しいはずです。

 そもそも釣りという遊び自体が生物を殺す事と表裏ですから、誰も偉そうなことは言えたものではないとは言え、どんな事にも程度というものがあると思います。
 釣りブームの中、ゴミの山になったり違法駐車やマナー違反で釣り禁止になる場所が増えています。自分の出したゴミは必ず持ち帰り、釣座の周りのゴミも少しだけ拾ってみましょう。


 漁港で漁師さんの網などを踏んで歩くような非常識な釣り人もいます。
 漁港は職業漁師、都市の岸壁や大型港は港湾作業が優先される場所です。立入禁止の場所にも理由が必ずあります。車の迷惑駐車や早朝夜中には声を抑える。必要以上に釣り場を独占しない。
 まだまだあるのですが、列記するとなんだか説教くさくうっとおしいほど長文になります。
 でも「常識で考えて当たり前の行動をする」の一言でまとめられるような事ばかりです。


 釣りを楽しむ事は、自然の恵みを謳歌しているのだという謙虚な意識で、楽しみをくれる自然への思いやりを忘れないだけで、行動が変わるだけでなく、間違いなく釣りの上達にも繋がると思います。




  一時間幸せになりたかったら酒を飲みなさい。
  三日間幸せになりたかったら結婚しなさい。

  八日間幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい。

  永遠に幸せになりたかったら釣りを覚えなさい。




 開高健もよくエッセーで取り上げていた中国の古諺です。
 釣りは趣味の王様といわれます。


 まず地域や職場・学校のクラブ活動に例えれば運動部なのか文化部なのか、両方の要素があります。
 自力で得た新鮮な魚を食べる楽しみもあれば、数や大きさを競う競技性もあります。
 生き物としての本能を刺激される狩りの側面もあれば、様々な道具に凝ったりコレクションしてみたりの楽しみもあります。
 普段の生活を離れ自分一人の世界に入れる面もあれば、家族や仲間と一緒に楽しむこともできます。



 こんな楽しい釣りですから、ちょっとしたルールや常識を守っていつまでも楽しみたいものです。


生き物の命を大事にしよう!海や川を汚さないようにしよう!

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